2015年4月30日木曜日

IT投資管理と「ITシステムの運用後の信頼性向上」という取組み

藤原です。

企業におけるITシステムの投資管理では、新規開発のシステムのみならず、運用後のシステムに対するマネジメントも重要であるという点については、過去のエントリ「IT投資のオペレーション・マネジメントとは?」でも記載の通りですが、それに関連して、ITシステムの”運用後”の取組みと課題に関する興味深いレポートが独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)より公開されましたので、今回はその内容のご紹介と考察をまとめたいと思います。

「情報システム運用時の定量的信頼性向上方法に関する調査報告書」(IPA/SEC)

本レポートは、ITシステムの運用時における信頼性向上方法(使用指標、指標測定データに基づく対策手法、予兆などの観測項目、観測データの分析手法など)に対する取組みの現状と課題を見出すことを目的として調査されたもので、以下の内容に添ってまとめられています。

  • ITシステム運用を取り巻く環境:ITシステムの複雑化、クラウド等の環境変化と障害発生の状況など
  • 運用プロセスと標準の動向:ITILとISO20000
  • 運用時の定量的指標事例:ITILやSLAなどに基づく定量的指標の事例
  • システム運用の信頼性向上ツール:運用支援ツールと障害予兆検出ツール
  • 運用の実態調査:実際の企業における運用実態(プロセス、指標、ツール、人材)
  • 運用時の定量的信頼性向上の現状と課題:開発と運用の統合における信頼性向上や、公的機関への期待等

詳細な内容については、原文を参照いただければと思いますが、特に私が注目したのは、以下の2点です。

  1. 「運用コスト」と「運用に起因する障害発生」の比率が増加している事実
  2. 運用ツール・取り組みとしての「障害予兆検知」に対する高い関心

1.「運用コスト」と「運用に起因する障害発生」の比率が増加

IT Proの2012年調査によると、保守開発を含む運用コストの比率が76%
また、政府IT Dashboard(2013)によると、ITシステム関連予算のうち、運用関連コストが80%という調査結果

この調査結果は、企業のIT投資全体に対して約”8割”という非常に大きな割合を占める「運用保守」フェーズのITシステムの管理活動は非常に重要であるということを示していると思います。

更に、ITシステムの障害発生のうち「運用・保守時の原因により発生」しているのが80%という調査結果に基づき、「運用時に起因する障害の比率が多くなり、運用時の信頼性向上が課題」と記されています。

投資マネジメントの観点としては、単に維持・運用コストの適正化というのだけではなく、「運用・保守過程にあるITシステムの資産価値を維持・増大」していくことも求められると考えます。
そこで、”システム運用後の信頼性を向上すること”が”IT資産価値を増大させること”に繋がると考えた場合、この「運用時に起因する障害発生の比率増加」という事実は、投資管理の観点からも取り組むべき重要な1要素であることを示していると言えるのでは無いでしょうか。

2. 「障害予兆検知」に対する高い関心

ITシステムの信頼性を向上させるため、障害発生の未然防止を実現するアプローチとして「障害予兆検出」に着目
企業の運用実態としては「予兆検知を活用した運用の自動化については今後の課題である」と記されています。

大規模化・複雑化する企業のITシステムにおいて、高いサービスレベル維持を実現するためには、
情報システムの運用保守に着目し、
その運用実態を適切に把握し、
その運用監視を強化する
(可視化による状況把握から変化に気づくための予兆検知の実現)
というアプローチが必要になってくると思います。

企業は、ITシステムの信頼性向上を果たすために、従来の運用監視を強化すべく「障害予兆検知」といった技術・サービスの導入を本格化していく必要があると感じました。
こうした取組みが「ITシステムの価値最大化」に繋がっていくと思います。


本レポートは、継続的に(年次)で調査・報告されるものかはわかりませんが、IT投資管理という側面においても関連の深い「運用後のITシステムの信頼性向上の取り組み」(=ITシステムの資産価値の維持・増大)について、企業の取り組みや実情を知るためにも継続的に調査され、レポートとして公開されることを期待します。


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