今回は、米国のPMI(Project Management Institute)から発行されている「ポートフォリオマネジメント標準(The Standard For Portfolio Management)」の概要についてご紹介したいと思います。
PMIはプロジェクトマネジメントに関する知識体系である「PMBOKガイド(Project Management Body of Knowledge)」を発行していることで有名ですが、マネジメント活動の標準として、プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントに関するガイド本も発行しています。
ポートフォリオマネジメント標準では、戦略的なビジネス目標達成の為に求められる様々なプログラム、プロジェクトおよびその他の活動を集合したものを「プロジェクト・ポートフォリオ」と位置付け、この効果的なマネジメントを促進するための様々なプロセスや知識体系を記しています。
昨年の12月末に「PMBOKガイド」「プログラムマネジメント標準」「ポートフォリオマネジメント標準」の3つの文書について改訂が行われ、ポートフォリオマネジメント標準は、第3版が発行されました。
※現在、PMI日本支部において、日本語翻訳化作業が進められている状況です。
※原本はこちら(米国PMI 公式HP)
ポートフォリオマネジメントとは?
ポートフォリオマネジメント標準では、「ポートフォリオ・マネジメント」を以下のように記されています。(※私の翻訳による解釈ですが)
ポートフォリオ管理は、組織の戦略と目標を達成するための一つ以上のプロジェクト等のポートフォリオを協調して行う管理活動です。
それは、組織における評価・選択・優先順位付けというプロセスと、経営ビジョン・ミッション・バリューと整合した経営戦略の達成の為に、限られた内部資源を割り当てることの相互関係を含んでいます。
ポートフォリオ管理は、組織における戦略の変更や、投資に関する意思決定をサポートするための貴重な情報を提供します。
プロジェクトポートフォリオマネジメントのプロセスは、大きく3つの分類で定義されています。
<プロセスグループ>
- 定義プロセス群(Defining Process Group)
- 整合プロセス群(Aligning Process Group)
- 認可・コントロールプロセス群(Authorizing and Controlling Process Group)
これらのプロセス群は、5つの知識エリアで分類され、各個別のプロセスが整理されています。
<知識エリア>
- ポートフォリオ戦略マネジメント
- ポートフォリオガバナンスマネジメント
- ポートフォリオパフォーマンスマネジメント
- ポートフォリオコミュニケーションマネジメント
- ポートフォリオリスクマネジメント
プロセスグループと知識エリアのマッピングをまとめたものが以下となります。
第3版への改訂
第2版から第3版への改訂に伴い、このプロセス分類の定義や知識エリアが大きく変わりました。知識エリアに関しては、「ガマナンスマネジメント」と「リスクマネジメント」だけだったのが、「戦略マネジメント」「パフォーマンスマネジメント」「コミュニケーション」という3つのエリアが追加され、再構成されています。
私自身、まだ十分に本書を読み込んだわけではありませんが、第2版では、ポートフォリオの管理活動自体にフォーカスされた構成であるのに対し、第3版では、組織全体を取り囲むステークホルダーとの関係性や、経営戦略との整合を意識した内容について、より強調されたような印象を受けます。
今回ご紹介したポートフォリオマネジメント標準は、あくまで標準的な知識やプロセス、スキル等の参考とする知識や推奨される慣行等を纏めたものであり、全てに適用できるわけではありません。
企業毎に、文化やステークホルダーも違えば、IT投資管理の取組み方にも違いがあります。
ですので、一様にこれらの標準を適用するような事は現実的ではなく、自社で現在取り組まれている投資管理活動を評価する上での参考情報として、本書に記載されていることが自社で実施された場合どのような効果が見込めるか、追加すべきプロセスや重点をおくべきタスクは無いか、等という視点で、一度目を通してみるのも良いかもしれません。
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