2013年1月31日木曜日

ITポートフォリオの実践に必要な3つのポイント



河田です。
昨年の振返り結果から、「アプリケーションポートフォリオ」、「PPM」に注目して、このBlogを訪問する方が多いことが分かりましたので、今回は「ITポートフォリオ」に関する話を少し。

ITポートフォリオについては、このBlogでも何度か取り上げたこともあり、抽象的な概念はある程度確立されているものの、具体論については見かけることが非常に少ないと感じています。

実は、昨年から「ITポートフォリオ」を中心テーマと扱っている研究会に参加し、多くの企業の皆さんと情報交換/意見交換をさせて頂いていますが、他のIT投資マネジメントの取組みに比べて実際の導入例は非常に少ないと感じています。

このような背景を踏まえ、今回はITポートフォリオの理論ではなく、実践向けのアプローチとして、具体的な手法と、ITポートフォリオを考える上で重要な3つのポイントについてご紹介します。

まず、「ITポートフォリオ」と聞くと・・・イメージでは、「戦略適合性」×「実現性」、「ROI」×「投資額」といった組合せのバブルチャートの例がよく使われます(私もイメージの説明にはよく使います)。



しかし、実際にITポートフォリオを活用する際には、このモデルは一つの例に過ぎず、
 ①どのような評価軸で分類するか?
 ②その評価軸をどうやってスコアリングするか?
という点が、実務上は非常に重要なポイントになります。

この①評価軸、②スコアリング方法については、何らかの正解がある訳ではなく実は色々な考え方があるので、まずは汎用的に公開されている情報からいくつかの手法をご紹介します。

----------
1.経産省の「業績評価参照モデル(PRM)を用いたITポートフォリオモデル活用ガイド
  • 「戦略適合性」×「実現性」の2軸で評価
  • 戦略適合性は、有効性、必然性、影響範囲の3視点で評価(計30点)
  • 実現性は、外部リスク、人的・組織的リスク、技術的リスク、プロジェクトリスクの4視点で評価(計20点)
  • 評価結果を4象限(2軸×平均値以上/以下)で分類し、案件を評価

2.経産省の「研修所研修教材」におけるITポートフォリオ
 <出典:経産省「IT経営協議会(H20.6)討議用使用」> 
  • 既存システムは「満足度」×「コスト要因」の2軸で評価(新規システムは業績参照モデルと同じ評価)
  • 満足度は、効果、機能充足度、操作性の3視点で評価(計40点)
  • コスト要因は、外部コスト、職員稼働量の2視点で評価(計25点)
  • 評価結果を4象限(2軸×平均値以上/以下)で分類し、案件を評価

3.政府調達のためのIT投資評価に関する調査研究
  • 戦略軸×技術軸の2軸で評価
  • 戦略軸は、下記5つの視点(8項目)で評価(50点)
  • 技術軸は、全般、開発 or 運用/インフラ視点(7項目)で評価(50点)
     
    (開発、運用/インフラ視点は選択制)

4.米国GSA(連邦政府一般調達局)の「Capital Planning and IT Investment Guide」
<「政府調達のためのIT投資評価に関する調査研究」より引用>
  • 「Technical Rating(技術要素)」×「Strategic Factor Rating(戦略要素)」の2軸で評価
  • 技術要素は、一般、開発 or 運用/インフラの視点(6~7項目)で評価(50点)
  • 戦略要素は、戦略的インパクト、便益への展望等の5視点(8項目)で評価(50点)

5.米国OMB(行政管理予算局)の「CAPITAL PROGRAMMING GUIDE v3.0
  • 「Suitability」×「Fitness」の2軸で評価
  • Suitabilityには、Strategic Alignment、Performance Measures等の指標を利用
  • Fitnessには、Serviece Reference Model、Technical Reference Model等の指標を利用
----------

如何でしょう?
リンク集のような話になってしまいましたが、実務者にとって少しは役立つ情報だったでしょうか?

文章だけでは、イメージし難い内容だと思いますので、興味のある方は各リンクからソース情報を是非ご参照下さい。

まずは、全体的なイメージだけでも掴みたいという方は、上記を含めたITポートフォリオモデルの概要を以下に公開しています。



今回は手法を中心にITポートフォリオを紹介しましたが、実際にITポートフォリオを活用する際の3つ目のポイント(一番重要なポイント)は、
 ③採用目的:何を説明するためにITポートフォリを使うのか?
という点にあります。

上述のような手法(テクニック)に走ってしまうと、忘れ去らることが多いですが、
ITポートフォリオは、「案件の取捨選択」、及び「アカウンタビリティ」といった主に経営層への報告に際して特に有効な仕組みですから、「何のために」を強く意識することが重要です。

なお、上記資料では応用例として「サービスポートフォリオ管理」、「投資分類毎のポートフォリオ管理」も紹介していますので、興味のある方は併せてご参照下さい。

最後に…「IT投資マネジメント情報局は、最低でも週次更新しなさい」という厳しくも温かい応援メッセージ付きの年賀状を送ってくれた大先輩のKさん、ご期待に沿えなくて・・・ごめんなさい。

メッセージはとっても嬉しかったのですが、一個人としては情報力(体力とも言う?)がまだまだ足りてないので、「仲間を増やして更新頻度を上げる」という作戦を4月目処で計画中です。
ご期待ください!

0 コメント:

コメントを投稿