2011年6月18日土曜日

バランススコアカード活用時の注意事項とは?

先週、プロミスポイント社主催のバランス・スコアカード(BSC:Balanced Score Card)セミナーに参加したのですが、その内容がとても参考になったので、今回はその中から特に私が有用と感じた部分(BSCの位置付け、活用時の注意事項)をご紹介したいと思います。

BSCは、IT投資マネジメントの合意形成で採用されていることも多いので、フレームワークを知識として理解している人は多いと思いますが、一方で実践的に活用できる人・・・というのは、少ないのでは?と思います。

偉そうに?書いている私も、ある程度理解しているつもりでセミナーに参加したものの、「なるほど」と感じるところも多かったので(^^;

毎度のことながら前置きが長くなりましたが、今回は考察ではなく備忘録的なメモなので、間違ってたら・・・遠慮なくコメント下さい!!!

【バランス・スコアカードとは?】(吉川教授の講演より)
  • 経営ビジョンと戦略を具体的な行動に落としこむための経営戦略立案・実行評価のフレームワーク、1992年にキャプラン&ノートンがハーバードビジネスレビューで発表
  • 戦略・ビジョンを4つの視点(財務の視点・顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と成長の視点)で分類し、各指標間の因果関係を明示することで企業全体の行動のベクトル合わせを図る

【バランス・スコアカードが誕生した時代背景、位置付け】
  • 1970年~1980年代の米国は、経営戦略の立案→(財務的な)マネジメントコントロールのみで、企業の競争力が無くなっていた
    従来の財務的指標中心の業績管理手法の欠点(短期的な結果ばかりを狙いすぎて企業競争力が損なわれていたこと)を補う目的で考案された
  • バランス・スコアカードは飛行機(企業経営)のコックピットのようなもの、従来の管理手法では分断されがちだったビジョンと戦略をリンクさせる(繋ぐ)もの
    従来の各種の経営管理手法やプロジェクトと対立する新たな管理手法ではなく、従来の管理手法を動力として、それをナビゲーションするもの
(※)吉川教授は「BSC誕生の時代背景と現在の国内の状況は酷似している」と仰っていましたが、今後、多くの企業でBSCを考える機会は増えそうですね。


【戦略ベクトル合わせ、BSCのカスケード】(スティーブ博士の講演より)
  • BSCの一番のメリットは、企業全体の活動のベクトル合わせができること
  • 全社(Tier1)⇒部門(Tier2)⇒個人(Tier3)へのカスケード(落し込み)が必須

【BSC活用時の注意事項】
  • 顧客の視点は、企業によってはステークホルダー全体となる場合がある
  • 学習と成長の視点は、組織能力で定義する場合もある
  • 一般に因果関係は、①学習と成長→②内部プロセス→③顧客→④財務となるが、非営利企業やTier2の間接部門の場合は③と④が逆転する場合がある
    →財務が目的ではなく、財務を通して顧客に貢献することが目的となるため
  • 戦略テーマの設定に際しては、必ず結果も含めるべき
    →結果状態を含めないとスローガンに終わる危険があるため

【戦略マップの注意事項】
  • 戦略マップはストーリー(物語)であるべき
    →顧客視点のKPIの設定が一番難しいが、仮説が必要
  • CSF(重要成功要因:目的)は、改善、上昇、削減、減少、強化など(継続的な)状態を表現すること
    →手段(Action)をCSFに使わないこと

【カスケードの注意事項】
  • 全社(Tier1)⇒部門(Tier2)⇒個人(Tier3)へのカスケードに際して、戦略テーマを変えてはいけない
    →ベクトル合わせにならない&取り組みが混乱するだけ
    →但し、カスケード時に戦略テーマは具体化する&KPIは同じである必要はない
  • カスケードに際しては、全てにCSFが入る訳ではない(個人レベルで財務の視点は必要なし)
  • カスケードに際しては、視点のレイヤは同じであること

私もITコンサルタントという職業柄?、実際に業務で簡単な戦略マップを書いたり、Tier2(部門レベル)のIT-BSCを作成したことはあったのですが、独学レベルの活用でちゃんと勉強したことがなかったので。。。今回は非常に得るものが多かった気がします(^^)

BSCの国内第一人者である吉川教授(横国大名誉教授)も、スティーブン博士(プロミスポイント社代表)も、非常にフランクでステキな方々でしたし。


多くの気付きを与えてくれた、吉川教授、スティーブン博士、そして機会を提供してくれたプロミスポイント社に感謝です。

最後に・・・様々なフレームワークを活用する上では、上辺の知識だけでなく本質的な理解が必要だなーということを今回のセミナーで改めて考えさせられました。

先週はJUASのIFRSセミナーにも参加したので、その話はまた今度にでも???(^^;

2011年6月3日金曜日

PPMツールの導入事例について思うコト

Blogのエントリを書くことよりも、Facebook連携(OGP)にハマってしまい・・・気がつけば月日だけが過ぎ、OGPも未だ思うようには動かせず。。。


なんてことに時間を浪費していたため、前回エントリからしばらく期間が空いてしまいましたが、今回はCA社発行の情報誌(Smart Enterprise Vol.2)に、PPM製品の導入事例が紹介されていましたので、その話を少し。
#実は、2ヶ月くらい前にはオフィスに届いていたのですが、忙しくて目を通せてなくて。。。orz

情報誌で紹介されていたのは、「アフラック(アメリカンファミリー生命保険)」の事例です。
記事の中で私が興味深いと感じたポイントをご紹介すると、
  • 「全社投資案件の検証」を目的に導入、投資対効果の検証には「コストベネフィット分析(CBA)」を採用。
    →IT投資案件の管理からスタートして、非ITの投資案件の管理に広げていくというアプローチは、これから導入を検討する企業にも参考になりますね。
    →IT投資効果をCBAで評価することの是非はありそうです(個人的にはオススメしません)が、業種特性として金融工学に精通した企業であることを想像すると、数値算出が求められるのでしょうか。。。
  • 「クラウド型の製品(CA Clarity PPM On Demand)」を採用。
    →システム特性としてはクラウド型がFITする一方、(本質的な話ではありませんが)データの性質から外部に出すことを嫌う企業が多いのでは?と考えられますが、、、英断ですね。
    →この製品の概要を知りたい方は、以前のエントリ「CA Clarity PPM」を
    どうぞ(^^)
  • システム構築期間は「約3ヶ月」だが、PPMの取組みは2004年から開始。
    →構築期間の短さもさることながら、
    製品導入に到る前のPPMの仕組み作りの期間(約5年)は注目すべき点ですね。
    →言い換えるなら、製品ありきで短期間で実現できる取り組みではないと言うコトですね。

次に、今回ご紹介したCA社はPPM製品ベンダーの中で、一番情報公開に積極的な印象を受けていますが、他社ももう少し情報公開できないのかな?と思っています。

勿論、クライアント企業との情報開示の合意が大前提なので、全ての事例が公開できる訳では無いと思いますが、
  • PPM製品ベンダーの方とお話すると、「製品認知度の低さを嘆いているヒトが少なくない」
  • ユーザー企業の方とお話しすると、「PPM製品の存在を知らないが、投資案件管理には高い関心を持っているヒトも少なくない」
というミスマッチが起きているのが実情なので、該当製品市場に関わる人々が製品競争以前に、PPM製品市場の認知を高めるアプローチを取らないと、このミスマッチは続きそうだな。。。と(^^;

当然のことながら、各企業で管理の仕組みが異なっていたり、コスト上の課題もあるので、投資案件管理に高い関心がある=PPM製品が導入となる訳ではありませんし、事例が全てを解決する訳でもありませんが、それらを差し引いて考えても、ちょっと情報が少なすぎるのでは?と感じています。

ユーザー企業のコア業務、戦略に深く関わっている新規開発案件であれば、公開も難しいと思いますが、PPMは製品+カスタマイズの世界なので、ベンダー側で機能紹介するよりも、ユーザー企業の使い方を公開した方が、検討中の企業にとっても参考になると思うんですよね。

しかも、個別にお話をお伺いする限り、ベンダーさん内部では相応の情報もお持ちですし・・・ね(^^)

こう書くと、「それなら、お前がやれよー」という声も聞こえてきそうですが、コンサルタントという職業柄&他社製品を情報公開することは難しく。。。(>_<)

もし、このエントリを目にした方の中に、PPM製品ベンダーでマーケティングに携わる方がいらっしゃったら、自社製品のPRの前に・・・市場認知を高めるアプローチの一つとして事例公開も是非ご検討下さい( ̄ー ̄)