2011年3月26日土曜日

IT投資区分の悩ましさ

初めに・・・東北関東大震災により被災された皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
私は学生時代に神戸で阪神大震災を経験したのですが、忘れかけていた当時の理不尽な世界を思い出しながら、被災地が1日も早く復興することを祈っています。


前回からしばらく期間が空いてしまいましたが、PC-Webzineの3月号で「日本企業のIT投資」が特集として組まれていたことに加えて、タイミング良く?経産省からも「企業IT動向調査2011報告書」が公表されたので、その2つの情報から、IT投資区分の話をご紹介したいと思います。


まず、1つ目のPC-Webzineの記事「日本企業のIT投資」について、簡単にご紹介しておくと・・・国内のリサーチ会社、シンクタンクのレポートを中心に国内のIT投資に関する定量的な分析が示されており、非常に読みやすく分かりやすい内容になっていると感じます。


具体的な内容は記事を直接見て頂きたいのですが、「IT投資区分」と、「企業におけるIT投資配分」の2つにフォーカスを当ててご紹介すると・・・


【IT投資区分】
(出典:日本企業のIT投資<PC-Webzine/野村総合研究所>)















【企業のIT投資配分】
(出典:日本企業のIT投資<PC-Webzine/野村総合研究所>)




















上記のグラフを見る限り、2003年から企業のIT投資配分は殆ど変わっていないと読めますね。。。
これら4つの投資目的から企業の投資配分を見てみると、2003年度から2010年度までの配分はほとんど変わらない。最も多いのが基盤関連投資で約半分ほどを占める。次いで業務効率化目的、情報活用目的、戦略的な目的と続く。
と書いてありますし(^^;
しかし、本当に企業のIT投資配分は変わっていないのでしょうか???

次に、経産省の調査報告書について簡単にご紹介しておくと・・・JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)が年次で作成している企業のIT投資動向に関する報告書で、今年度の重点テーマは「グローバルIT 戦略」と「IT 投資マネジメント」の2つが挙げられています。


この報告書から、「IT投資区分」と、「企業におけるIT投資配分」の2つにフォーカスを当ててご紹介すると・・・


【IT投資区分】
(出典:企業のIT投資動向に関する調査報告書<経産省/JUAS>)











【企業のIT投資配分】
(出典:企業のIT投資動向に関する調査報告書<経産省/JUAS>)
















2007年から投資配分は大きくは変わっていないという点は、同じですね。
全体として、投資割合にほぼ変化はなく、インフラ型:業務効率型:戦略型=4:4:2 の傾向が続くが、昨年やや増加した業務効率型が減少し、その分インフラ型・戦略型が微増している。
と書いてありますし(^^;


しかし、よく見てみると・・・投資区分の定義が違うとは言え、NRIの区分の「基盤関連投資」とJUASの区分の「インフラ型投資」は、10%近く違っています。同様に両区分の「業務効率化投資」も10%弱は違いますね。
この違いは・・・誤差なのでしょうか?(^^)


この報告書をもう少し読み進めてみると・・・


【企業のIT投資配分】
(出典:企業のIT投資動向に関する調査報告書<経産省/JUAS>)
















こちらは、年度比較では無く2010年度の売上高別の投資配分比較ですが、企業規模によって投資配分は大きく違うことには注意が必要ですね。


ここまでは、レポートの分析結果から投資配分を考えてみましたが、実は・・・実際に投資案件を区分する場合、かなり厳格に区分定義をしていないと、投資区分の比率は簡単に変わります。。。というか、変えられます?(^^;


例えば、SFAの投資を考えた場合、導入年度でも定義次第で・・・業務効率化/(情報活用)/戦略のどの区分にも当てはめることができますね。


また、次年度以降でSFAの利用者を拡大した場合・・・実際は基盤となるH/Wの増強、セキュリティの強化を行う場合もあると思いますが、その投資は基盤/インフラ型でしょうか?それとも、導入時の区分に従うべきでしょうか?


抽象的な話なので正解がある訳では無いと思います。


該当投資をどの区分に当てはめるとしても、企業内で考える場合は、その振り分け方が統一されていれば問題は無いと私は考えています。
但し、、、今回例示した統計のように複数企業を対象とする場合は各企業が同一の区分に当てはめるとは限らないので、結果はブレが生じますよね。


つまり、統計の区分比率を鵜呑みにし、統計値をベースに「戦略投資はx%で」と単純に捉える訳にはいかないところが、実務上は難しい/悩ましいなぁと(^^;


結局のところ・・・ITの投資区分は、自社のIT投資分析やIT投資ポートフォリオを検討するためのものであり、統計は単なる参考にしかならいんですよね(^^)


なお、今回は2つの投資区分を例に挙げましたが、投資区分の方法は他にもメタグループの区分(任意・必要の5分類)、JIPDECのガイドラインの区分(類型・効果の17分類)等、色々とあります。
どのIT投資区分が優れている云々ではなく、各企業にとってどのような区分で、どのようにモニタリングすることが有益かを含めて考えなければならないところも、悩ましいですね。


上述のIT投資区分の悩ましさ(価値観の相違)が、裏をかえせば・・・企業毎にIT投資のフレームワークが必要である理由にも繋がっていると私は考えています( ̄ー ̄)

2011年3月11日金曜日

「政府情報システム改革検討会」その2

昨年12月に「政府情報システム改革検討会」より。。。というタイトルで既にご紹介していますが、計8回の会合を経て3/2に改革検討会の提言が纏められていたので、今回はその話を少し。

検討会の位置付けについては、前回の記事を参照して頂きたいのですが、前回以降に公開されている検討会から、私が興味を持った(参考になる or 面白いなーと感じた)点をご紹介すると、、、

論点整理(第五回)
  • 発散しかけていた検討会を収束させるための論点整理において、「IT投資管理の必要性」が述べられ、投資効果の創出に有効な手法(民間の事例)として「合意形成アプローチ」が挙げられています。
  • ⇒合意形成アプローチについて勉強したい方は、コチラの本がオススメです(^^)

◆英国の調達管理の取り組み - OGC Gateway Review(第六回)(第七回
  • OGC(英国商務局)の調達管理の仕組みが紹介されています。
    ⇒プログラム・プロジェクトにおけるリスクマネジメントの方法論としては、非常に興味深い内容ですね。

  • CIOを中心とした間接ガバナンス」は興味深いです。
    ⇒タイトルはちょっとげんなりしますが、内容は府省に限った話では無く、大企業/グループ企業のガバナンスのアプローチの要点を突いていますね。

  • 提言は大きく3つありますが、冒頭の提言に「IT投資管理の確立・強化」が挙げられています
    ⇒やはり、時代はIT投資マネジメントを求めてますね\(^o^)/
  • 但し、最後のオチ?とも言うべき「今後の取り組み」を引用すると・・・「業務・システム最適化指針」、「情報システムに係る政府調達の基本指針」等の各種ガイドラインの必要な見直し、政府共通プラットフォームの着実な整備を行う必要がある
    ⇒あれ?トーンダウンしてない?IT投資管理の確立・強化は必要性を訴えるだけで具体策は無し・・・と思うと、ちょっと残念(^^;

ダラダラと書いてしまいましたが、上記以外にも韓国の指標の話、米国のITダッシュボードの話など、諸外国の政府の取り組みは今まで殆ど知らなかったので、興味深く感じます。

たまたま見つけた情報でしたが、このBlogとも縁ある内容も少なくなく、とても参考になりました。

政府系の仕事には縁が無く、興味も無く???、直接お会いする機会も無いヒト達なので、お礼を言うこともできませんが、興味深い資料を公開してくれた検討会の構成員の方々に感謝です。

最後に・・・政府に限った話ではありませんが、有用な取組み、仕組みが惜しみなく公開され、それを他の企業も参考にしながら更に良いものを生み出す。。。というようなポジティブな循環が、IT分野で進むと良いのになぁ。。。と、思います。

ITの仕組みそのもので勝負できる時代ではなく、ヒトがどう使うか(使いこなすして価値を出すか)が差別化要素になっているのだから。