2011年12月27日火曜日

ITIM分野の実務者が興味を持ったのは?(2011)

ふと気がつけば、今年も残すところあと数日になりました。


社会的には東日本大震災という忘れられない悲しい出来事があり、
経済的には欧州の債務危機やオリンパスの粉飾事件等、残念な出来事が起きてしまい、
「本当に大切なモノ=価値って、何だろう?」と色々と考えさせられる年でもありましたが、
皆さんにとって今年はどんな年だったのでしょうか?


いきなり重たい話でスタートしてしまいましたが・・・
個人的には昨年以上に多くの方とお会いすることができた中で
興味深い意見交換、情報交換ができた一年であり、
また新たな取り組みの機会にも恵まれた実り多き一年だったと思います。


社内外を問わず、多くのチャンスを与えてくれた関係者の皆さん、
そしてこのBlogを見てくれた&様々なフィードバックをくれた皆さんに、深く感謝しています。


今年は、仕事上の役割の変化、執筆活動、資格取得等、一年間に多くのチャレンジを
詰め込んでしまったため???、
残念ながらBlogの投稿は昨年に比べて大きく減少(昨年:3.5件/月→今年:1.5件/月)
してしまいましたが、
その反省も兼ねた一年の振り返りを、Google Analyticsのデータの一部からご紹介します。


■全体傾向(訪問数、ページビュー数、他)
  • 訪問者数は昨年に比べ、約1.5倍(昨年は約1,000訪問者/半年)に伸びています
  • また、PV数を見ると新規ユーザーとリピーターが逆転しています
  • 直帰率は、昨年に比べて約10%近く増えています


投稿数の大幅減を考えると、訪問者数が伸びた理由は分かりませんが・・・
推測するなら、純粋に該当分野に興味を持った方が増えたのかも???しれません。
そして、高い直帰率から、新たに興味を持った方々にとって、
このサイトは期待に応えられなかったことが分かります。残念ながら。。。


■参照元(ソースメディア)
  • 参照元は、昨年同様にGoogleからの検索結果が一番多い(約6割)です
  • 昨年は数%あったTwitterはランク外に消え、代わりにFacebook経由(=知人?)のアクセスが約2%あります


私の行動パターンは変わっていないので、ソースメディアの比率の変化はブラウザ・シェアや、ソーシャルネットワークの栄枯盛衰の影響かもしれません。


■検索傾向(キーワード)
  • 検索キーワードは、昨年同様に「IT投資評価」、「IT投資マネジメント」、「ガイドライン」等の組合せが多く、今年は「Val IT」、「アプリケーションポートフォリオ」等も使われています
  • また、PPM製品について、昨年は「Project Server」だけでしたが、今年は「Changepoint」、「Clarity」等で検索されてきたケースも増えています


国内では、まだ普及段階にあるとは言えないプロジェクトポートフォリオ・マネジメント製品も、
少しづつ注目が高まっているのかもしれません。
また、キーワードとサイト滞在時間の関係性を見ると・・・
ガイドライン等の検索で辿り着いた方は、PV数、サイト滞在時間にプラスの関係がありますが、
製品キーワードで検索された方にとっては、あまり期待に応えられなかったようです。


■閲覧ページ

■アクセス元(地域)
  • アクセス元の地域は、東京が一番多いものの昨年以上に全国に広く分布しています
  • グラフには表示されていませんが、海外からのアクセスは米国、ブラジル、豪州から数十件のアクセスがありました


国内では、北は北海道から、南は沖縄まで広く全国に、、、
海外では日本人が多いと言われている国に?
IT投資マネジメントに関わるテーマに興味がある方がいらっしゃるということですね。


昨年度の分析」と同じ視点で、一通りの簡易分析をしてみましたが、
限られたデータでも色々な仮説を立てて考えてみる(妄想してみる?)のは面白いですね。

閲覧ページの上位が昨年と殆ど変わらなかった
JUASのSRM」以外の上位の投稿は全て昨年度の投稿であった)ことは、軽く凹みましたし、
直帰率の上昇もコンテンツの魅力とマイナスの相関関係があると思うので、
反省すべきところは多くありますが、


昨年以上に多くの方がこのサイトを訪れてくれたこと、フィードバックをくれたこと、
そして、一部の方にとって・・・もしIT投資マネジメントについて何かを考えるキッカケになったのであれば、嬉しいです。


冒頭で触れた「本当に大切なモノ」について、、、
私の答えは「人との繋がり」なのかな?と、一年を振り返りながら考えています。

最後まで読んでくれた皆さま・・・
(少し早いですが)それでは、良いお年を。

2011年12月21日水曜日

IT Executive Scorecardとは?

今回は、数日前にWeb記事で見かけてからずっと気になっていた「IT Executive Scorecard」について、ご紹介します。

バランス・スコアカードの発展形?、それとも新しいフレームワーク?と期待して調べてみたら・・・正しくは「HP IT Executive Scorecard」という名前のHP社のITマネジメント管理製品でした。

詳細は下記のリンクを参照して欲しいのですが、HP社の製品サイトでは
「ITの測定基準を収集して重要業績評価指標を作成し、 上級管理者がビジネスサイドにわかりやすい形で情報を提示できる、スコアカードとダッシュボードを提供するツール」
と紹介されています。

残念ながらこのサイト上の情報は簡易デモだけで、具体的な内容が良くわからなかったので、少し調べてみたところ・・・現時点ではこの辺りの情報が一番分かりやすいですね。

この製品で私が共感を持てたのは、下記3点です。
  • HP社がベストプラクティスとして定義したKPIをテンプレートとして提供していること
  • 該当KPIを「ITの価値」「ユーザー満足度」「ITの運用品質」「先行投資」というBSCとマッピングしやすい4つの視点で区分していること
  • 該当KPIのモニタリングに必要な情報を収集する機能を有していること

実際にどこまでできるか?は、HP社のヒトに聞いてみないと分かりませんが・・・
システム全体を俯瞰して数値化することの重要性が理解されていない(正しくは、そういうアプローチそのものを認識されていない?)ことも多く、
重要性を理解していたとしても、実際にレポーティングの指標を定義することも、指標のモニタリングに必要な情報を集めることも結構大変なワークなので、きちんと実運用できている企業は多くは無いはず。

そう考えると、指標+測定方法が一定の仕組みとして利用できるのは、魅力的ですね。
<出典:IT運用の改善はKPIベースの全体俯瞰から(ITPro)>



















但し、現時点では英語版のみで、価格も100万円/ユーザーというライセンス体系なので、普及するには、まだまだ時間がかかりそう。

該当製品を単に導入することで、「システム全体の可視化ができる」とは思えませんが、定義されたKPIの中には「なるほど」と感じる指標も結構あったので、該当分野に携わっている方には参考になると思います。
#特に、4つの指標のサブ項目定義がスマートですね。

サービスマネジメント分野に明るい知人にこの製品の話をしたら、「KPIの指標がITILで定義されている指標に似てる」と言ってましたし。

大雑把に言えば、BSC+ITIL=IT Executive Scorecardという認識で良いのかもしれませんね。

最後に・・・今回は思うところがあって、初めて?顔文字無しでこのエントリを書きましたが、日頃から使い慣れていた(曖昧な表現は顔文字で誤魔化していた?)せいか、予想以上に文末表現に苦しんでしまいました。
どんな些細なことであれ、「変える」ことは大変ですね。

2011年11月30日水曜日

ベンチャーで働くコンサルタントの気づき、その2(ITIM編)

担当しているPJ、研究活動以外に人事評価&採用やらコーポレートサイトのリニューアルやらが重なって右往左往していたので、またまた更新間隔が開いてしまいましたが・・・
今回は、前回に引き続きIT投資マネジメントをテーマとした振り返り(私自身の気づき)について、ご紹介したいと思います。

ここ最近の調べモノの影響を強く受けている?ので、内容として偏りもあり、「言い過ぎじゃね?」という部分もあるかもしれませんが・・・このエントリを見たIT投資に係わる実務家の方にとって「そんな考え方もあるかもねー」という参考になれば(^^;



■(誤解を恐れずに言えば)欧米企業との単純比較は、本質的には意味が無い
→「比較が要らない」とか、「比較は国内企業との比較だけで十分」と言っているのではなく、安易で単純な比較には意味が無いなーと感じることが多いです。
→例えば、、、「A分野は欧米企業のIT投資はx%だけど、国内企業はx%程度しかなく、劣っている」というような論調をよく見かけますが、それらの多くが上辺の数値しか捉えておらず、背景にある環境の差異、もっと言えば文化的な差異を考慮していないことが多いなと。
→勿論、私自身も調査、研究で欧米企業ではどうか?ということは気にしていますし、必要に応じてレポートにも含めますが、あくまでInputの一つに位置付けるべきもので、それだけで主張してはアカンなと。その事象を事実(問題点)として捉えたとしても、具体論なアクションに落とす段階で論理の飛躍に気づく(要は同じことができない)ので、それじゃ意味ないなーと思います。

■比率を見る時には、分母が重要
→IT投資に限らず何らかの比率の説明をする場合、本来はその説明に必要となる適正な母集団があるはずですが、IT投資に係わる比率ではその母数が(範囲としても、数としても)オカシイことが結構あるのでは?と感じます。
→例えば、 あるレポートでは「企業情報システムの障害の7割は運用・保守フェーズに起因している」という話が記載されてましたが、その母数となる障害数は「報道記事として扱われた数」で構成されていました。。。orz(設計・開発フェーズの全ての障害が報道されるのか???)
→不思議なことに身近な数値については、前提となるロジックがオカシイことにすぐに気がつくのですが、統計データや桁の大きな数値になって具体的なイメージができなくなると・・・なぜか母数の妥当性を考えることを見落とすケースが多い気がします(^^; 


■成果指標は、決めることより測定することの方が数倍難しい
→これもIT投資の指標に限った話ではありませんが、多くの企業において成果指標を決めるところまでは熱心なレビュー、議論が繰り返されますが、決めた指標を継続的にモニタリングすることができる企業となると、かなり限定的になるなーと感じます。
→コンサルタントとして仕事をしていると、様々な成果指標を定義する機会がありますが、(実行性の考慮が不十分なまま)理想的な指標を定義することに注力してその後が尻すぼみになるケースと、簡易であっても指標を継続的に測定している(測定結果を踏まえて改善している)ケースでは、数年後の差が大きく違うことを痛感します。 

今回は気づきと言いつつ、「ネガティブな注意事項」のような話ばかりになってしまいましたが、古くて新しいテーマ(昔から根本的な部分は変わってないけど、アプローチや考え方が変わってきているテーマ)であるIT投資のマネジメントについては、意外と当たり前のことが当たり前にできていないのかもしれません。

但し、何かに対して批判をしたいという意図ではなく、IT投資マネジメントという悩ましいテーマを扱う上で十分に考えなきゃいけないなーという自戒を込めて(^^;

ちなみに、今回のエントリ内容は全てが私自身のオリジナルということでもなく、色々な方とのコミュンケーションを通して分かったこと、教えて頂いたこともしっかりと含まれてます。
色々と意見交換/情報交換させて頂いた皆さま、本当にありがとうございましたm(_ _)m

最後に・・・ベンチャー企業ならでは?の話として、「このBlogを会社サイトからリンクする計画?」が浮上していたのですが、思ったことを気軽に書けなくなるのは避けたかったので、とりあえず今回は先送りしました(^^;

但し、このBlogを読んでくれている読者の方と、いつか一緒に仕事をしてみたいなーと考えたりすることもあるので、いつの日か?会社サイトからリンクが貼られても耐えうる内容にはしていきたいと思ってます(^^)v

2011年10月5日水曜日

ベンチャーで働くコンサルタントの気づき

このBlogを始めてから、早いもので1年が経ちました。
その間、IT投資マネジメントに関する調査、研究、実務に関わってきた中で、多くの研究者、一流のコンサルタント、経営マネジメント層の方々との出会いがあり、表面的な知識から一歩踏み込んで、多くの気づきを得られた気がしています。

今回は、自分のための振り返りを兼ねて、多くの出会いから得られた(私自身の)気づきについて、少しご紹介したいと思います。

書いてみると、思った以上に?色々な視点の気づきが多くあったので、まずは「ベンチャーで働くコンサルタント」というテーマで振り返りをしてみます。
客観的に見れば「IT投資マネジメント」から少し離れたテーマになりますが、私の中では密接に繋がってますので。。。
そして、IT投資マネジメントをテーマとした振り返り(気づき)については、次回以降ということで(^^;


■実務者は研究者(学術関係者)から学ぶべきことが多くある
→このBlogを見てくれる方の多くは、私と同じ実務者の方ではないかと思いますが、実践的と称される書籍や情報ばかりをInputとしていませんか?
→勉強会や学会に参加していると強く感じますが、研究者の方々は「実務者との距離というか、実務から学ぶべきこと」を意識されているのに対し、(自身への反省も含め)実務者側は、研究者から学ぶということに対する姿勢が不十分だなーと。
→まぁ、ぶっちゃけて言えば、毎月のように開催されている微妙なIT系のセミナーに参加するよりも、研究会/学会に参加した方が、実務上も役に立つなーと思います(^^;

■情報は受信するよりも(間違っていても)発信した方が、結果的に多くの情報を得られる
→普通に考えれば、有限の時間の中でInputとOutputを考えると、Inputに専念した方が多くの情報を得られそうな気がしますが、実際には自分のOutputに対して量的にもそれ以上の情報が(周囲の方々から)得られたり、質的にも大きな価値がある(情報として頭の中に整理できる)Inputになって戻ってくることが多いなーと。
→ブーメラン的に得られた情報の価値について、脳科学とかから論証できたりするとカッコイイのですが、残念ながらその手の知識は無いので推測に過ぎませんが・・・自分で考えたコト(興味を強く持った情報)の方が、関連する情報も含めて記憶領域にしっかりと残るんぢゃないかと。
前職のコンサルファームにいた時から情報を発信することの重要性は漠然と感じていましたが、ベンチャーに転身し、自動的に受信する情報が以前よりも少なくなったので余計に強く感じます(^^;

■一流のヒトほど専門分野以外の多くの分野から学んでいる
→「専門性が高い=該当分野のみを追いかけている」と勘違いをしていませんか?(私はそう思ってました・・・)
→しかし、実際に専門性が高いヒトはその分野のみを追いかけていることは少なく、広範な分野から学ばれていて、それが結果として専門性の深さに繋がっているなーと。
→私自身も、(少しだけではあります&まだまだですが)追いかける範囲を広げたことで、見えてきたコトもあるなーと、 感じています。

■環境/境遇が違うヒトとのコミュニケーションを通して、本質に気づく(ことがある)
→要は類似した職種、業種のヒトとのコミュニケーションは(会話の前提があって)簡単なのですが、一方で無意識に前提を持ってしまっているため、本質を得ていないことがあるなーと。
→逆に、環境/境遇が違うヒトとのコミュニケーションは、言葉一つの意味でさえ違っていることもあり、その状況下で説明、意見交換をしていると、そのプロセスを通して本質に気づくことがあると感じています。

如何でしょう?職種や環境が違うヒトも多いと思いますが、共感して頂ける点はありました???

色々と書きましたが、私自身もまだまだ発展途上?の人間なので、振り返りは重要ですね。

何より、今回の振り返りで一番重要な気づきは、、、「せっかくの気づきを、(日々の仕事に終われて)イマイチ実践できていない(活かせていない)かも???」ということでした(>_<)

という訳で・・・今回のエントリーは、私自身の備忘録としても、しっかり活用したいと思います(^^;

2011年9月8日木曜日

IT Reform or ITリフォーム?

本業が忙しかった上に体調不良も重なって、更新間隔が空いてしまいましたが、今回はIAIA(行政情報システム研究所)の記事から、米国政府のIT投資に関する興味深い話を見つけたので、その話をご紹介したいと思います。


この記事は、今年の8月に米国政府CIOに着任したスティーブン・バンロケール氏が各省庁のCIO向けに主たる責任や権限を提示した覚書の内容を要約されたものですが、その中から一部を引用させて頂くと・・・

【覚書の概要】
CIOの役割は今までの政策立案やインフラ運用から脱却し、本当の意味でのITポートフォリオ・マネジメントにシフトするべきである。 
これにより、各CIOは各府省庁のミッションや業務に有効なITソリューションを導入することが出来ると同時に、組織横断的なソリューションの導入に対する阻害要因である官僚的組織を打破することが出来るであろう。 
なお、各府省庁CIOの主たる責任や権限は「ガバナンス」、「共通システム」、「プログラムマネジメント」及び「セキュリティ」の4項目から構成される。

やはりというべきか・・・米国では、「ITポートフォリオ・マネジメント」が重視されていますね。
「ガバナンス」と「セキュリティ」が明確に分けられている辺りは、米国らしい気もしますが、軸を明確に区切って管理することは重要ですよね。

この話は米国の官公庁の取り組みに限った話ではなく、国内の大手企業においても当てはまる気がします。
グローバル企業は勿論のこと、ガバナンスに課題(悩ましさ?)を抱えるグループ事業にとっては特に・・・(^^;


そして、この覚書に関連する下記の記事からは、OMBが「IT Reform Plan」を掲げてIT投資のマネジメントを見直していることが分かりました。

この記事をパッと見た時に、IT Reform Planという表現が目に留まりました。

少し話が逸れますが、今年の初めに日経コンピューター(1月6日号)の記事「さらば、新規開発」を見てから、そこで触れられていた「ITリフォーム」のアプローチに興味を持っていたこともあり、やはり時代はITのリフォーム(新規構築ではなく、骨格を残した上での見直し)を求めているのかなーと漠然と考えていて、

気になったので、2010年12月に制定されているIT Reform Plan原文を調べてみると・・・「Reform」の意味合いが私の認識と違ってた(T_T)

日本語で「リフォーム」と書かれると・・・住宅用語からのイメージで改築、改装といった見直し的なニュアンスをイメージします(上述の日経コンピューターでも同様のニュアンスで使われています)が、これは和製英語の使い方なんですね。

reformを普通に訳すと、改革、改正という意味でした(改良というニュアンスも無くはないけど)。

「IT Reform」も「ITリフォーム」も重要であることには変わりは無いのですが、少なくとも海外の文章からIT Reformという表現を引用するときには気をつけよう(^^;

2011年8月4日木曜日

IT投資の波、IT部門の工場化について・・・

今回は、最近見たZDNetの記事の中に、IT投資マネジメントを考える上で非常に興味深い話があったので、その話を少しご紹介したいと思います。


まず、「日本に残る巨大戦艦志向」というサブタイトルで、国内企業のIT投資案件規模の話が触れられていますが・・・下記の指摘はとても興味深い指摘と思いませんか?
  • IT投資の波(大規模投資とその償却サイクル)を考えている企業がある
    →「経営を説得できる理由がない」と悩んでいるが、前時代的発想でナンセンス 
  • 国内企業の開発案件の投資規模は、世界の中でも群を抜いて大きい
    経営視点でのキャッシュの平準化が図れない上、コントロールリスクも高い


次に、「費用対効果を測りにくい大規模案件」というサブタイトルで、大規模案件の投資管理の3つの問題点が挙げられていますが、これも納得です。

  • 「投資対効果を説明し難い」(定性的な話を絡めないと正当化ができない)
  • 「規模の不経済が発生する」(案件規模が拡大すると、生産性が低くなる)
  • 「失敗の確率が高まる」(ステークホルダーも複雑化し、失敗要因が増える)


案件規模を小さくすればそれだけでイイと単純に言うつもりはありませんが、案件規模とリスクのの関係は「比例」どころか、「指数関数的」なんじゃないか?と感じることがあります。

#私の知る限り・・・「戦艦大和」PJでは、船長でさえ過去に「大和」を作ったことが無い場合も少なくない上、クルーの一人一人も全体像が見えてない中で進みますから、計画通りに目的に到達する確率は高くは無く、、、それどころか、一歩間違うとデスマーチがやってくるような気がします。
#大規模PJのマネジメントに関わっているヒトは、同じような思いをされたこともあるのでは?(^^;

キャッシュ負担の波が経営に与える影響も同様で、普通に考えたら投資に波があることでデメリットはあっても、メリットって何も無いですよね。

記事の中の例示のように、個別案件を同等規模に細分化することに優位性は感じませんが、案件規模をある程度平準化することによって得られるメリットは大きいですよね。ITIM的に言えば、ポートフォリオとして管理しやすいですし(^^)v



こちらはSOAに関する記事ですが、上記と同じ方が書いており、鋭い指摘だなーと思います。私が特に共感した点を引用&要約してご紹介すると・・・

  • 新しい取り組みをする場合、「プロジェクトをどういう体制で進めるか」は非常によく考えられることが当然となってきたが、「組織が時代に適しているか?」「IT投資の在り方は時代に適しているか?」という視点で課題設定をしている企業にはあまりお目にかからない。
  • SOAの技術は「呼び出す方は呼び出される方を気にしない」方向に進化しており、それがService化の方向性である。そういう意味では、組織全体もユーザーに細かいことを気にさせない方向にシフトするのは、ある意味当然である。
  • IT部門は単に技術がよりService化を求めるからService部門化するのではなく、ITが提供するサービスが一層Service化する方向になるから、Service部門化しなければならない。

詳しい内容はリンクから記事を参照して頂きたいと思いますが、この記事の著者が指摘している通り、目の前の問題点の解決策ばかりに重点が置かれすぎて、そもそも・・・の部分の議論が十分では無いケースは多いと感じます。

IT投資マネジメント分野に絞って言えば、「その投資が妥当か否か?」には注力が置かれますが、「そもそも投資判断の方法は従来と同じで良いのか?」の検討が欠けているというか、前提条件化されてしまっている企業が多いと感じます。
→正しく言えば、実務上の担当者はその前提条件化された問題を認識しているものの、担当者のパワーではその前提条件を変えられずに悩んでいるケースもありますね。

また、サービス化の流れとService部門化の流れは、表現としては分かり難いのですが、こちらも「納得」です。

このエントリを見て興味を持ったヒトは、是非リンクから記事を参照してみて下さい。はてなB登録もあまりされてないようでしたが、とても気付きの多い記事だと思います。

そして、共感してくれた方は、最後に「いいね」ボタンをポチっと。。。(^^)v

2011年7月19日火曜日

「インタンジブル・アセット」を読んで

今回は、久しぶり?の書籍コメントです。
Booklog本棚に登録している通り、IT投資マネジメントの関連文献はちょこちょこと読んでいるのですが、今回の本ほど「なるほど!」と「難しい・・・orz」が混在している本は珍しいかも?ということで、一部を引用しながらご紹介したいと思います(^^;

インタンジブル・アセット―「IT投資と生産性」相関の原理インタンジブル・アセット―「IT投資と生産性」相関の原理
エリック ブリニョルフソン Erik Brynjolfsson

ダイヤモンド社 2004-05
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2004年に書かれた本なので、事例(モデルケース)には古さが残りますし、複数の論文の組合せで構成されているため非常に難解な文章、数式も少なからず出てきますが、それらを差し引いても読む価値がある(重要な示唆がある)本だと思います。

まず初めに、インタンジブル・アセットとは・・・「(企業の情報化による生産性向上に寄与する)人材やノウハウのような目に見えない資産」のことを指していますが、

序章で触れられているロバート・ソローの「生産性パラドックス」の通念(コンピューター時代の到来はいたるところで感じることはできるが、生産性統計には表れていない)に対する2つのメッセージが、シンプルで共感が持てます(^^)

  • 「コンピューターへの投資効果がゼロだという仮説は排除できない。しかしその一方で、標準誤差が大きいからといって、投資効果がかなり大きいという仮説を排除することもできない」
  • 「証拠の不足は、不足の証拠にはならない」


そして、インタンジブル・アセットの重要性を証明するための?投資への考察が興味深いです。

  • 業績が良く最も企業価値が高い企業は、IT投資額が多く、さらに組織的資本への投資額はそうでない企業の10倍にも上っていた。
  • つまり成功した企業はIT(ハードウェアおよびソフトウェア)へ1ドル投資するごとに、業務慣行を支援するために10ドル投資したことになる。


次に、「高生産性企業の七つの原則」については、この部分だけを読むと当り前のコトを書いているように感じましたが、本書を一通り読み終えた後に振り返ってみると、「確かに。。。」と納得できる部分が多いと思います。(以下は、省略した形の引用文です)

  1. (テクノロジーの導入に際しては)アナログからデジタルの業務プロセスに移行すること
  2. 意思決定責任と決定権を分散すること
  3. 社内の情報アクセスを促進し、コミュニケーションを活発にすること
  4. 年功序列ではなく、個人の業績に基づいた給与体系とする(報奨制度とリンクさせる)こと
  5. 事業目的を絞り込み、組織の目標を共有すること
  6. 最高の人材を採用すること
  7. 人的資本に投資する(教育や研修に費用と時間をかける)こと

「デジタル化による事業変革の原則」については、特定の手法によることの是非だったり、今となっては・・・という部分もありますが、例えば「インターネット」→「ネットワーク」と読み替えると、納得感は高まりますね。
  1. 情報技術だけでは十分ではない。デジタル事業には、製品情報の提供や製品・サービスの注文などのウェブサイトの構築や基本的機能の導入以外に実施すべきことが多数ある。
  2. マトリックス・オブ・チェンジを活用して、自社の業務形態の相互補完精について理解する
  3. 補完的試算を現行の事業システムから目標の事業システムへの移行に活用するためにインターネットを利用する
  4. 企業と経営者は、ただ他社の業務形態を模倣するのではなく、事業を発案(または再発案)するつもりで取り組む必要がある

表現が全般的に難しい本なので、完全に理解するには今の私では力不足な気もしますが、著者が言わんとすることは、何となく?理解できたと思います。

要は、「IT化投資で生産性を向上するためには、直接的なIT化への投資だけでなく、スキル、組織構造・プロセス、企業文化等の目に見えない資産の価値を高める投資が重要」ということですね(^^)

今まで、経験則の延長であったり、主観的な主張としてこのような話を耳にするコトはありましたが、膨大なデータ、様々な事例からロジカルに論証しているところが、MITの著名な教授の著書ならでは。。。という気がします。

気軽には読みにくい本ですが、過去の事例の勉強も兼ねて・・・興味がある方は是非!
この本を読んで、私もちょっとだけ賢くなれた気がします(^^;

最後に・・・本書ではIT投資の中でも特に「生産性向上とインタンジブル・アセットの関係性」に焦点が絞られていますが、「資産」という概念はクラウドの活用、IFRSへの適合等を踏まえた今後のIT投資マネジメントを考える上でも重要なKeywordになると考えられています。
その話は、また今後どこかでしっかりと触れたいと思います(^^)v

2011年7月7日木曜日

初めての学会で学んだコト

今日は七夕ですね。綺麗な夜空が見たかったなぁ。。。
七夕には何ら関係ありませんが、先週末に人生初の学会に参加したので、今回はそこで学んだコト、感じたコトについて、少しご紹介したいと思います。


日頃からお世話になっている武蔵大学の松島先生のご紹介により、学生時代にも参加したことのない「学会」に初めて参加したのですが、良い意味での驚きが数多くあり、思いもしないほど貴重な経験を積むことができました!


実は・・・開催場所は私の母校だったのですが、、、
何せキャンパスに足を踏み込むのも卒業以来(何年前だ???)という程、学術分野とは縁遠く過ごしてきたため、参加する前までの学会のイメージは、「象牙の塔」に限りなく近かったのですが、
実際は学術関係者に閉ざされた場所ではなく、多くの企業人・実務家にとっても非常に有用な場だと感じました。



IT投資マネジメントの話ではありませんが、私が驚いたコト、多くの実務家の方に共有したいコトを3つ挙げると・・・
  1. 実務に近いテーマも数多く研究されている
    →全ての研究が・・・とは言いませんが、企業内の戦略立案に役立つ研究、サービス企画や運営に直ぐに活かせそうな研究が、数多くありました。
  2. 社会的地位のある先生方が、非常にフランクに接してくれる
    →私も若くは無いものの・・・著名な学会だけあって参加者の多くは教授、准教授という肩書きを持つ年配の方が中心でしたが、発表時の質問には丁寧に答えてくれるし、懇親会の席でも物腰柔らかで、人間的に魅力ある方が圧倒的に多かったです。
  3. 発表者のプレゼンが、驚くほど上手い!!!
    →正直なところ、学術関係者の方がプレゼンをするイメージはあまり無かったのですが、本当にプレゼン上手な方が多くて、「人前で話すのは得意かも」と勘違い?していた自分が恥ずかしくなりました。。。ホントに。

ここまで読んでくれた方の中には「何のPRだ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、純粋に企業の実務家も、もっと学会に参加して勉強すべき。。。と実務家の一人として強く感じました。
しかも、参加費用を考えても、微妙なIT系のセミナーに比べて圧倒的に有意義だなーと(^^;


ちなみに、私が参加させて頂いた発表は下記でした。
  • 7/3(日)13:00~ IT投資マネジメントの変革
    →もし、発表された論文に興味がある方は、個別に連絡下さい。
    関係者に確認した上で、ご案内します。

松島先生が発表者兼司会者を務めながら、他の先生方との合同で約2時間の発表、意見交換(議論)という流れのセッションでしたが、多くの人から質疑の声が上がり、非常に活発な議論であったと思います。
#強いて問題を挙げるとすれば、私が緊張のあまり上手くしゃべれなかったことぐらい。。。(>_<)


今回は、知識の面で多くのことを学べたことは勿論のこと、モチベーションという面でも良い刺激を受けましたし、そして何より人との出会い、意見交換ができたことは「Priceless」だなーと、強く感じた2日間でした。

私の会社の活動コンセプトの一つに「つなぐ」というKeywordがあるのですが、「研究」と「実務」をつなぐ存在になりたいなーとの思いが強くなりました(^^)v

最後に、貴重な機会を下さった松島先生、及び懇親会で若輩者の意見に耳を傾けてくれたITIM研究会の皆さん、本当にありがとうございましたm(_ _)m

2011年6月18日土曜日

バランススコアカード活用時の注意事項とは?

先週、プロミスポイント社主催のバランス・スコアカード(BSC:Balanced Score Card)セミナーに参加したのですが、その内容がとても参考になったので、今回はその中から特に私が有用と感じた部分(BSCの位置付け、活用時の注意事項)をご紹介したいと思います。

BSCは、IT投資マネジメントの合意形成で採用されていることも多いので、フレームワークを知識として理解している人は多いと思いますが、一方で実践的に活用できる人・・・というのは、少ないのでは?と思います。

偉そうに?書いている私も、ある程度理解しているつもりでセミナーに参加したものの、「なるほど」と感じるところも多かったので(^^;

毎度のことながら前置きが長くなりましたが、今回は考察ではなく備忘録的なメモなので、間違ってたら・・・遠慮なくコメント下さい!!!

【バランス・スコアカードとは?】(吉川教授の講演より)
  • 経営ビジョンと戦略を具体的な行動に落としこむための経営戦略立案・実行評価のフレームワーク、1992年にキャプラン&ノートンがハーバードビジネスレビューで発表
  • 戦略・ビジョンを4つの視点(財務の視点・顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と成長の視点)で分類し、各指標間の因果関係を明示することで企業全体の行動のベクトル合わせを図る

【バランス・スコアカードが誕生した時代背景、位置付け】
  • 1970年~1980年代の米国は、経営戦略の立案→(財務的な)マネジメントコントロールのみで、企業の競争力が無くなっていた
    従来の財務的指標中心の業績管理手法の欠点(短期的な結果ばかりを狙いすぎて企業競争力が損なわれていたこと)を補う目的で考案された
  • バランス・スコアカードは飛行機(企業経営)のコックピットのようなもの、従来の管理手法では分断されがちだったビジョンと戦略をリンクさせる(繋ぐ)もの
    従来の各種の経営管理手法やプロジェクトと対立する新たな管理手法ではなく、従来の管理手法を動力として、それをナビゲーションするもの
(※)吉川教授は「BSC誕生の時代背景と現在の国内の状況は酷似している」と仰っていましたが、今後、多くの企業でBSCを考える機会は増えそうですね。


【戦略ベクトル合わせ、BSCのカスケード】(スティーブ博士の講演より)
  • BSCの一番のメリットは、企業全体の活動のベクトル合わせができること
  • 全社(Tier1)⇒部門(Tier2)⇒個人(Tier3)へのカスケード(落し込み)が必須

【BSC活用時の注意事項】
  • 顧客の視点は、企業によってはステークホルダー全体となる場合がある
  • 学習と成長の視点は、組織能力で定義する場合もある
  • 一般に因果関係は、①学習と成長→②内部プロセス→③顧客→④財務となるが、非営利企業やTier2の間接部門の場合は③と④が逆転する場合がある
    →財務が目的ではなく、財務を通して顧客に貢献することが目的となるため
  • 戦略テーマの設定に際しては、必ず結果も含めるべき
    →結果状態を含めないとスローガンに終わる危険があるため

【戦略マップの注意事項】
  • 戦略マップはストーリー(物語)であるべき
    →顧客視点のKPIの設定が一番難しいが、仮説が必要
  • CSF(重要成功要因:目的)は、改善、上昇、削減、減少、強化など(継続的な)状態を表現すること
    →手段(Action)をCSFに使わないこと

【カスケードの注意事項】
  • 全社(Tier1)⇒部門(Tier2)⇒個人(Tier3)へのカスケードに際して、戦略テーマを変えてはいけない
    →ベクトル合わせにならない&取り組みが混乱するだけ
    →但し、カスケード時に戦略テーマは具体化する&KPIは同じである必要はない
  • カスケードに際しては、全てにCSFが入る訳ではない(個人レベルで財務の視点は必要なし)
  • カスケードに際しては、視点のレイヤは同じであること

私もITコンサルタントという職業柄?、実際に業務で簡単な戦略マップを書いたり、Tier2(部門レベル)のIT-BSCを作成したことはあったのですが、独学レベルの活用でちゃんと勉強したことがなかったので。。。今回は非常に得るものが多かった気がします(^^)

BSCの国内第一人者である吉川教授(横国大名誉教授)も、スティーブン博士(プロミスポイント社代表)も、非常にフランクでステキな方々でしたし。


多くの気付きを与えてくれた、吉川教授、スティーブン博士、そして機会を提供してくれたプロミスポイント社に感謝です。

最後に・・・様々なフレームワークを活用する上では、上辺の知識だけでなく本質的な理解が必要だなーということを今回のセミナーで改めて考えさせられました。

先週はJUASのIFRSセミナーにも参加したので、その話はまた今度にでも???(^^;

2011年6月3日金曜日

PPMツールの導入事例について思うコト

Blogのエントリを書くことよりも、Facebook連携(OGP)にハマってしまい・・・気がつけば月日だけが過ぎ、OGPも未だ思うようには動かせず。。。


なんてことに時間を浪費していたため、前回エントリからしばらく期間が空いてしまいましたが、今回はCA社発行の情報誌(Smart Enterprise Vol.2)に、PPM製品の導入事例が紹介されていましたので、その話を少し。
#実は、2ヶ月くらい前にはオフィスに届いていたのですが、忙しくて目を通せてなくて。。。orz

情報誌で紹介されていたのは、「アフラック(アメリカンファミリー生命保険)」の事例です。
記事の中で私が興味深いと感じたポイントをご紹介すると、
  • 「全社投資案件の検証」を目的に導入、投資対効果の検証には「コストベネフィット分析(CBA)」を採用。
    →IT投資案件の管理からスタートして、非ITの投資案件の管理に広げていくというアプローチは、これから導入を検討する企業にも参考になりますね。
    →IT投資効果をCBAで評価することの是非はありそうです(個人的にはオススメしません)が、業種特性として金融工学に精通した企業であることを想像すると、数値算出が求められるのでしょうか。。。
  • 「クラウド型の製品(CA Clarity PPM On Demand)」を採用。
    →システム特性としてはクラウド型がFITする一方、(本質的な話ではありませんが)データの性質から外部に出すことを嫌う企業が多いのでは?と考えられますが、、、英断ですね。
    →この製品の概要を知りたい方は、以前のエントリ「CA Clarity PPM」を
    どうぞ(^^)
  • システム構築期間は「約3ヶ月」だが、PPMの取組みは2004年から開始。
    →構築期間の短さもさることながら、
    製品導入に到る前のPPMの仕組み作りの期間(約5年)は注目すべき点ですね。
    →言い換えるなら、製品ありきで短期間で実現できる取り組みではないと言うコトですね。

次に、今回ご紹介したCA社はPPM製品ベンダーの中で、一番情報公開に積極的な印象を受けていますが、他社ももう少し情報公開できないのかな?と思っています。

勿論、クライアント企業との情報開示の合意が大前提なので、全ての事例が公開できる訳では無いと思いますが、
  • PPM製品ベンダーの方とお話すると、「製品認知度の低さを嘆いているヒトが少なくない」
  • ユーザー企業の方とお話しすると、「PPM製品の存在を知らないが、投資案件管理には高い関心を持っているヒトも少なくない」
というミスマッチが起きているのが実情なので、該当製品市場に関わる人々が製品競争以前に、PPM製品市場の認知を高めるアプローチを取らないと、このミスマッチは続きそうだな。。。と(^^;

当然のことながら、各企業で管理の仕組みが異なっていたり、コスト上の課題もあるので、投資案件管理に高い関心がある=PPM製品が導入となる訳ではありませんし、事例が全てを解決する訳でもありませんが、それらを差し引いて考えても、ちょっと情報が少なすぎるのでは?と感じています。

ユーザー企業のコア業務、戦略に深く関わっている新規開発案件であれば、公開も難しいと思いますが、PPMは製品+カスタマイズの世界なので、ベンダー側で機能紹介するよりも、ユーザー企業の使い方を公開した方が、検討中の企業にとっても参考になると思うんですよね。

しかも、個別にお話をお伺いする限り、ベンダーさん内部では相応の情報もお持ちですし・・・ね(^^)

こう書くと、「それなら、お前がやれよー」という声も聞こえてきそうですが、コンサルタントという職業柄&他社製品を情報公開することは難しく。。。(>_<)

もし、このエントリを目にした方の中に、PPM製品ベンダーでマーケティングに携わる方がいらっしゃったら、自社製品のPRの前に・・・市場認知を高めるアプローチの一つとして事例公開も是非ご検討下さい( ̄ー ̄)

2011年5月18日水曜日

IT投資の予算管理製品とは?

公私共に異常に忙しく、、、前回のエントリから約1ヶ月ぶりとなってしまいました。しかも、書こうとしたらBloggerが障害になるし。。orz
久しぶりの更新だったので、テーマ設定に悩んだのですが、、、今回は仕事でも少し関わりのあったIT投資の予算管理システムについての話(気付き?)をご紹介したいと思います。


「予算管理」と一言で言っても、実装機能は様々で、一般的な?ハコモノ投資の予実管理に特化したような製品から、主に販売管理系ERP製品の一部機能など多様な製品があるのですが、対象をIT投資に絞ってみると、、、意外にも製品が少ない状況であることが分かりました。


勿論、IT投資専用の製品がある訳ではないので、IT投資の予算管理に適合しそうな(正しくは、予算管理がメインで付加機能が少ない)製品という意味ですが(^^;


まず、調べてみて最初に気付いたことは、、、上述のとおり製品カテゴリに曖昧さがあるせいか、「予算管理の製品についてはいわゆる市場シェア等の公開情報が少ない!」ということです。
リサーチ会社のレポートを探してみたり、色々なKeywordでGoogle先生に問い合せてみたのですが、見つけられたのは下記の情報ぐらいでした。


<出典:ITR Market View:大企業向け基幹業務市場2007ITR)>














Oracleがシェア1位の製品を持っているの?(あまり聞いたこと無いのになー)という漠然とした疑問から、シェア上位の各社を調べてみたところ・・・買収されてますね(^^;


具体的には・・・

  • Hyperion Solutions → 2007年:Oracleが買収
  • Cartesis → 2007年:Bussiness Objectsが買収 → 2007年:さらにSAPが買収

数年前の情報なので正確性を気にしても仕方無いのですが、Oracle(ハイペリオン)、SAP(カルテシス)、インフォア・グローバル・ソリューションズの3社合計で9割以上のシェアというのは・・・ちょっと違和感はありますね(^^;
レポートにケチをつけるつもりもありませんし上記の調査時点では無かった製品ですが、Microsoftも2007年にMicrosoft Office PerformancePoint Serverを出しており(但し、現在はSharePoint Server 2010に統合)、該当製品を担いでいるSIerも数社いらっしゃるようなので、現時点ではもう少しシェアが違っているように思います。
#結局のところ・・・製品群を見ると、予算管理製品はBI製品の一部という位置付けのようですね(^^)


次に、IT投資マネジメントと予算管理を、各社がどのように関連性を持たせているのかな?と思って調べてみたところ、分かりやすい概念図をOralceのサイトから見つけました。


<出典:CFO for Tomorrow(Oracle)>




















概念図の通りOracle製品としては、IT投資のポートフォリオ管理と予算管理は別製品で構成していますが、計画段階でシュミレーションを含むPPMをHyperion Strategic Financeで実現し、決定した案件の予算管理にHyperion Planningを使うことを推奨しているようです。


今回は市場概況に近いレベルの簡易調査しかしていないので、踏み込んだ話は書けませんが、多くの企業(事業会社)においてIT投資の予実管理はExcelレベルであることも少なくなく、またSI企業等のIT案件の多い企業の場合は、社内システムの一部としてスクラッチ開発しているケースも多いと思います。
このような取り組みが良くないというつもりはありませんが、投資判断から予実管理までを一連のシステムとして繋がりを持たせる際には、このような製品の検討も必要になりそうですね( ̄ー ̄)


なお、今回の調査において、企業の予算管理について調ている最中に・・・非常に興味深いサイトを見つけたので、併せてご紹介しておきます。


個人の方のサイトですが、非常によく考えられて取組まれている様子が事細かに記録されており、このエントリに興味を持った方であれば、一読の価値はあると思います!(^^)

最後に・・・前回のエントリ「xx県情報システム全体最適化計画を見て。。。について、予想外に???様々な方からコメント、参考情報を頂きました。


頂いた情報を元に少し調べてみたところ・・・官公庁の中でもCIOを含めたトップの意識が高いところは、情報システム化計画も具体的な取り組みも民間と違いの無い高いレベルで実施されていることが分かりました。


コメントを下さった皆さま、本当にありがとうございましたm(_ _)m

2011年4月7日木曜日

「xx県情報システム全体最適化計画」を見て。。。

官公庁のIT事情には全く明るく無いのですが・・「政府情報システム改革検討会」(その1/その2)の話以来、少し興味を持ったので、今回は地方の県における情報システムの話を少し。。。


まず、調べてみて驚いたのですが、地方でも情報システムに係わる情報公開が進んでいます。

以前(と言っても十年以上昔の話ですが。。。)、2年間ほど官公庁(主に霞が関+外郭団体)を担当していたので、良くも悪くも民間企業との文化/制約等の違いは理解しているつもり?だったので、あまり期待はしていなかったのですが、意外に・・・というか想像以上に?情報公開が進んでいますね(^^;


どうやら、平成19年3月に制定された総務省の「新電子自治体推進指針」に少なからず影響を受けているようです(^^)


「地方」と言いながら、47都道府県を調べる時間も無いので、、、今回は私の地元である岡山県を中心に周辺で情報公開が進んでいると思われた3つの県の「情報システム計画」にフォーカスをあて、その中から私が感じたことをご紹介したいと思います。

上記の計画は何れもH20~H22年に公開され、県の情報システムの最適化をテーマに扱われた資料で、骨子レベルでは①現状分析、②構想策定、③アクションプランという構成で大きな差異は無いものの、見比べてみると、、、意外に?内容だけでなく、考え方の違いに驚かされます。

具体的には・・・
<岡山県>
  • 別途整理されている会議資料概要版からも、目的、取組みの妥当性が分かりやすく纏められており、何を課題視し、いつまでに何に取り組み、どういう効果を狙うか?が非常に分かりやすく整理されています。
    #地元・・・という贔屓目込みですが、一番良く出来ているのではないかと(^^)
  • 具体的な取組みとしては、「汎用機のオープン化」を中心に、「サーバー統合」、「ID統合」、「ライセンス管理」が挙げられており、H25年までに7.5億/年のランニングコストの抑制を目標に掲げています。
<広島県>
  • 抽象的な構想策定だけでなく、もう少し踏み込んで基本方針に一定の技術論を盛り込んでいる点、広範な取り組みを検討している点には非常に好感が持てますが、一方でシステム個別の(数値上の)情報開示や目的と取組みの連動性が十分とは言えないような・・・
    #目標数値は掲げられているので、(やっていないはずはなく)情報公開を渋っただけ???(^^;
  • 具体的な取組みは、「システム個別の適正化」、「汎用機のオープン化」、「共通基盤の整備」、「セキュリティ強化」等で、H22年度までに14億/年のランニングコストの抑制を目標に掲げています。
<鳥取県>
  • 全体構成は他県と類似していますが、汎用機上の基幹業務のオープン化是非の検討が中心となっており、投資対効果のシュミレーション、指標ベースの比較部分は・・・内容の妥当性は別として、、、興味深いです。
  • 但し、全体最適化という名目を考えると、規模の異なる他県と比べて半ば強引に結論付けしていること、そして構想(あるべき姿)と結論が異なっていることが、非常に残念です。
    #何となく・・・一定の結論に導くための情報を積み上げられたような印象が残ります(T_T)
  • 具体的な取組みは、「汎用機の維持?」と「サーバー統合」で、目標は12百万円/年の電気代抑制?のようです。。。orz
<補足:全国的な傾向(岡山県情報システム最適化計画会議資料より引用>
  • システム最適化計画を策定しているのは、16府県(34.0%)
    <都道府県CIOフォーラム「年次総会資料」(平成19年8月)>
  • レガシーシステム(汎用機システム等)からオープンシステムへの変更は、32都道府県(68.1%) 
    <全国都道府県情報管理主管課長会「都道府県における情報処理の運営状況」(平成19年度)>
  • 汎用機システム(大型コンピュータ)を完全に廃止しているのは、7県(14.9%)
    <全国都道府県情報管理主管課長会「都道府県における情報処理の運営状況」(平成19年度)>

公的機関という性質上、戦略的なIT投資は(概念としても?)あまり無く、コスト抑制のみが取り組み目的に位置付けられているため、IT投資のマネジメント・・・という観点で、触れられる話は限られますが、
  1. 規模こそ違えど同種の業務を実施しているはずの3県で、同じ指針に従った取り組みにも関わらず・・・これだけ全体最適化計画の考え方が違う
    ⇒仮に3県にIT投資管理のフレームワークを導入する場合も、(人的リソース、組織文化の関係性があるので)枠組みを共通化するのは現実的ではなさそう。。。(^^;
  2. 投資効果の検討に際し、シュミレーションや指標ベースの比較等、検討の枠組みがしっかりしていても、内容次第で納得感に欠けてしまう
    ⇒評価のフレームワークは重要だけど、それ以上に重要なものがある???肝心の中身が作文になってしまうと・・・意味は無い?(^^;
という、当り前のことを感じました。

なお、現段階では難しそうですが、将来はコスト抑制だけでなく、主要システムが県民にとってどのように役立っているか?というような視点で投資効果を指標で目標設定&実態公開されていると、素敵なのになーと思います(^^)

最後に・・・関係者の方がこのBlogを見ることは無いとは思いますが、もしいらっしゃったら、辛口コメント?は大目に見て下さいねー。あくまで、公開情報から感じた私見なので(^^;

皆さんの地元の都道府県の取組みはどうなっていますか?

面白い取り組み、先進的な取り組みをしているところがあれば、是非教えてください(^^)

2011年3月26日土曜日

IT投資区分の悩ましさ

初めに・・・東北関東大震災により被災された皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
私は学生時代に神戸で阪神大震災を経験したのですが、忘れかけていた当時の理不尽な世界を思い出しながら、被災地が1日も早く復興することを祈っています。


前回からしばらく期間が空いてしまいましたが、PC-Webzineの3月号で「日本企業のIT投資」が特集として組まれていたことに加えて、タイミング良く?経産省からも「企業IT動向調査2011報告書」が公表されたので、その2つの情報から、IT投資区分の話をご紹介したいと思います。


まず、1つ目のPC-Webzineの記事「日本企業のIT投資」について、簡単にご紹介しておくと・・・国内のリサーチ会社、シンクタンクのレポートを中心に国内のIT投資に関する定量的な分析が示されており、非常に読みやすく分かりやすい内容になっていると感じます。


具体的な内容は記事を直接見て頂きたいのですが、「IT投資区分」と、「企業におけるIT投資配分」の2つにフォーカスを当ててご紹介すると・・・


【IT投資区分】
(出典:日本企業のIT投資<PC-Webzine/野村総合研究所>)















【企業のIT投資配分】
(出典:日本企業のIT投資<PC-Webzine/野村総合研究所>)




















上記のグラフを見る限り、2003年から企業のIT投資配分は殆ど変わっていないと読めますね。。。
これら4つの投資目的から企業の投資配分を見てみると、2003年度から2010年度までの配分はほとんど変わらない。最も多いのが基盤関連投資で約半分ほどを占める。次いで業務効率化目的、情報活用目的、戦略的な目的と続く。
と書いてありますし(^^;
しかし、本当に企業のIT投資配分は変わっていないのでしょうか???

次に、経産省の調査報告書について簡単にご紹介しておくと・・・JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)が年次で作成している企業のIT投資動向に関する報告書で、今年度の重点テーマは「グローバルIT 戦略」と「IT 投資マネジメント」の2つが挙げられています。


この報告書から、「IT投資区分」と、「企業におけるIT投資配分」の2つにフォーカスを当ててご紹介すると・・・


【IT投資区分】
(出典:企業のIT投資動向に関する調査報告書<経産省/JUAS>)











【企業のIT投資配分】
(出典:企業のIT投資動向に関する調査報告書<経産省/JUAS>)
















2007年から投資配分は大きくは変わっていないという点は、同じですね。
全体として、投資割合にほぼ変化はなく、インフラ型:業務効率型:戦略型=4:4:2 の傾向が続くが、昨年やや増加した業務効率型が減少し、その分インフラ型・戦略型が微増している。
と書いてありますし(^^;


しかし、よく見てみると・・・投資区分の定義が違うとは言え、NRIの区分の「基盤関連投資」とJUASの区分の「インフラ型投資」は、10%近く違っています。同様に両区分の「業務効率化投資」も10%弱は違いますね。
この違いは・・・誤差なのでしょうか?(^^)


この報告書をもう少し読み進めてみると・・・


【企業のIT投資配分】
(出典:企業のIT投資動向に関する調査報告書<経産省/JUAS>)
















こちらは、年度比較では無く2010年度の売上高別の投資配分比較ですが、企業規模によって投資配分は大きく違うことには注意が必要ですね。


ここまでは、レポートの分析結果から投資配分を考えてみましたが、実は・・・実際に投資案件を区分する場合、かなり厳格に区分定義をしていないと、投資区分の比率は簡単に変わります。。。というか、変えられます?(^^;


例えば、SFAの投資を考えた場合、導入年度でも定義次第で・・・業務効率化/(情報活用)/戦略のどの区分にも当てはめることができますね。


また、次年度以降でSFAの利用者を拡大した場合・・・実際は基盤となるH/Wの増強、セキュリティの強化を行う場合もあると思いますが、その投資は基盤/インフラ型でしょうか?それとも、導入時の区分に従うべきでしょうか?


抽象的な話なので正解がある訳では無いと思います。


該当投資をどの区分に当てはめるとしても、企業内で考える場合は、その振り分け方が統一されていれば問題は無いと私は考えています。
但し、、、今回例示した統計のように複数企業を対象とする場合は各企業が同一の区分に当てはめるとは限らないので、結果はブレが生じますよね。


つまり、統計の区分比率を鵜呑みにし、統計値をベースに「戦略投資はx%で」と単純に捉える訳にはいかないところが、実務上は難しい/悩ましいなぁと(^^;


結局のところ・・・ITの投資区分は、自社のIT投資分析やIT投資ポートフォリオを検討するためのものであり、統計は単なる参考にしかならいんですよね(^^)


なお、今回は2つの投資区分を例に挙げましたが、投資区分の方法は他にもメタグループの区分(任意・必要の5分類)、JIPDECのガイドラインの区分(類型・効果の17分類)等、色々とあります。
どのIT投資区分が優れている云々ではなく、各企業にとってどのような区分で、どのようにモニタリングすることが有益かを含めて考えなければならないところも、悩ましいですね。


上述のIT投資区分の悩ましさ(価値観の相違)が、裏をかえせば・・・企業毎にIT投資のフレームワークが必要である理由にも繋がっていると私は考えています( ̄ー ̄)

2011年3月11日金曜日

「政府情報システム改革検討会」その2

昨年12月に「政府情報システム改革検討会」より。。。というタイトルで既にご紹介していますが、計8回の会合を経て3/2に改革検討会の提言が纏められていたので、今回はその話を少し。

検討会の位置付けについては、前回の記事を参照して頂きたいのですが、前回以降に公開されている検討会から、私が興味を持った(参考になる or 面白いなーと感じた)点をご紹介すると、、、

論点整理(第五回)
  • 発散しかけていた検討会を収束させるための論点整理において、「IT投資管理の必要性」が述べられ、投資効果の創出に有効な手法(民間の事例)として「合意形成アプローチ」が挙げられています。
  • ⇒合意形成アプローチについて勉強したい方は、コチラの本がオススメです(^^)

◆英国の調達管理の取り組み - OGC Gateway Review(第六回)(第七回
  • OGC(英国商務局)の調達管理の仕組みが紹介されています。
    ⇒プログラム・プロジェクトにおけるリスクマネジメントの方法論としては、非常に興味深い内容ですね。

  • CIOを中心とした間接ガバナンス」は興味深いです。
    ⇒タイトルはちょっとげんなりしますが、内容は府省に限った話では無く、大企業/グループ企業のガバナンスのアプローチの要点を突いていますね。

  • 提言は大きく3つありますが、冒頭の提言に「IT投資管理の確立・強化」が挙げられています
    ⇒やはり、時代はIT投資マネジメントを求めてますね\(^o^)/
  • 但し、最後のオチ?とも言うべき「今後の取り組み」を引用すると・・・「業務・システム最適化指針」、「情報システムに係る政府調達の基本指針」等の各種ガイドラインの必要な見直し、政府共通プラットフォームの着実な整備を行う必要がある
    ⇒あれ?トーンダウンしてない?IT投資管理の確立・強化は必要性を訴えるだけで具体策は無し・・・と思うと、ちょっと残念(^^;

ダラダラと書いてしまいましたが、上記以外にも韓国の指標の話、米国のITダッシュボードの話など、諸外国の政府の取り組みは今まで殆ど知らなかったので、興味深く感じます。

たまたま見つけた情報でしたが、このBlogとも縁ある内容も少なくなく、とても参考になりました。

政府系の仕事には縁が無く、興味も無く???、直接お会いする機会も無いヒト達なので、お礼を言うこともできませんが、興味深い資料を公開してくれた検討会の構成員の方々に感謝です。

最後に・・・政府に限った話ではありませんが、有用な取組み、仕組みが惜しみなく公開され、それを他の企業も参考にしながら更に良いものを生み出す。。。というようなポジティブな循環が、IT分野で進むと良いのになぁ。。。と、思います。

ITの仕組みそのもので勝負できる時代ではなく、ヒトがどう使うか(使いこなすして価値を出すか)が差別化要素になっているのだから。

2011年2月28日月曜日

PPM製品の意外な使い方?

先日、先輩コンサルタントの紹介で、PPM(Project  Portfolio Management)製品を導入している会社(以下、A社)の方に、ヒアリングをする機会がありましたので、今回はその話を少し。。。

Blogという性質上、A社の企業概要について具体的な話は避けますが、百数十人規模のIT部門でC社のPPM製品を活用している一部上場企業です(^^;

ヒアリングを通して、導入前後の変化、影響や、利用者としての率直な感想等、多岐に渡って教えて頂いたのですが、一番興味深かったのは・・・PPM製品の使い方でした。
結論から言えば・・・A社では、「プロジェクトの管理(スケジュール管理、課題管理)よりもむしろ、IT要員の管理(業務の可視化)のためにPPMを使っている」ことが分かりました。

IT投資マネジメント分野、PPM製品の動向を調査している中で、気がつけば・・・製品の特徴、機能を前提とした使い方を勝手に?想像していましたが、一般に多機能型の製品が多いことを考えると、使い方を絞る(割り切って使う)ことは非常に重要なことだと感じました。

改めて・・・PPMの定義を確認しようとしたところ、このBlogでも何度も扱ってきたにも関わらず、明確な用語定義をしていなかったので、@IT情報マネジメントの「ポートフォリオ・マネジメント」の用語定義から該当部分を引用すると、、、
複数の個別プロジェクトの状況や特性(進捗、リソース、将来性、技術リスクなど)を横断的に把握することで、プロジェクトの選定・着手順序・追加投資・改善・中止などの意思決定を行う仕組み

また、同様にPMI標準におけるポートフォリオマネジメントの定義は、、、
特定の戦略的ビジネス目標を達成するために、1つまたは複数のポートフォリオを集中してマネジメントすること

一般に・・・という一括りも良くないかもしれませんが、今回のA社のケースは「良い意味で」一般とは割り切り方?が違うと感じます。
パッケージ製品を使う場合、全ての機能を使いこなすことが良いとは限りませんしね(^^;

A社の方からお伺いしたことの一部を(差し支えない範囲で)ご紹介すると・・・
  • PPMの導入前には・・・「多様なIT部門業務を全て工数で可視化するのは単純ではない、等」現場には抵抗があった。
  • しかし、結果的には工数管理の部分は参考程度になっており、社内の全案件をツールで一覧化できたことが一番、役に立っている。
  • 具体的には、今どんな案件が動いていて、今後どんな案件が動くのかが各担当者も把握できるため、中期の取り組み計画が容易に立てられるようになった。
  • 管理職にとっては、稼働状況、IT投資額が把握できることにより、数値に基づいた仮説が立てられることも大きい。
企業規模が大きくなるにつれ、IT投資のマネジメントに際して・・・当り前と思うことがその規模の大きさに起因して当り前にできなくなるケースが多くありますが、A社の場合はPPM製品がその点を上手くカバーしている(つないでいる)とも言えそうです。

最後に、、、案件当事者でなければ分からない貴重な情報を得るキッカケを作ってくれた先輩コンサルタントのFさん(この投稿を見ているかどうかは定かではありませんが・・・)、本当にありがとうございましたm(_ _)m

今回のヒアリングを通して・・・コンサルティングを生業としている一人として、人脈の重要性、有り難さを改めて感じると共に、表面的な情報だけで勝手な思い込みをしていた自身への反省ができました。
まだまだ・・・精進が足りませんね(>_<)

2011年2月9日水曜日

Compuware Change Point

更新間隔が少し空いてしまいましたが、アクセス統計を見るとPPM製品に対する検索が多いようなので、今週はCompuware社のChangePointについて、少しメモしておきたいと思います。


Compuware社について、国内では恐らく知名度がそれ程高く無いのでは?と思いますが、実はPPM製品としては「PPM製品の動向&市場」でご紹介したとおり、GartnerのMagic QuadrantでLeader企業と位置付けられています。
また、Vantage製品に代表されるアプリケーション管理製品分野では名の通った企業ですし、最近ではWebサイトのパフォーマンス測定(ベンチマーキング)でも話題になりましたね。
個人的には、Vantageの前身となる製品を十数年前に使ったことがあり、懐かしい思い出もあったりします(^^;

前置きが長くなりましたが、そのCompuware社のITポートフォリオ製品がChangePointです。

但し、この製品については(ついても???)私自身が導入経験が無く、デモサイトも無いので、Webの公開情報をベースに推測込みで、以下に簡単にポイントを紹介すると・・・
  • 製品のウリは、「IT活動のライフサイクル全体をマネジメントするビジネス横断型ITポートフォリオソリューション」
    →相当分かりづらい表現ですが、「IT投資をビジネス(正確にはITサービス)上の効果として関連付け、測定する」ことに主眼を置いてある
  • グローバル市場での製品評価が高いが、国内事例は不明でローカライズもされていない?
    →情報も・・・Webサイト+Webセミナーだけでは良く分からない部分も少なくない・・・
  • 他社製品には無い(若しくは、それ程重視されていない)機能であるアプリケーションポートフォリオ管理に注力
    →プロジェクトタスクをアプリケーション(サービス)に関連付け、プロジェクト視点では管理することのない指標(ユーザー満足度、パフォーマンス等)も含めた管理を志向
  • 提供形態はパッケージの他にSaaS型モデルもある
  • 価格は・・・他製品と比べても安価とは言えない(^^; →パッケージ価格は以前のVer(v.12)で約800万円~、最新Ver(2010)は約1,500万円~???
うーむ。。。
調べれば調べるほど、、、一般の事業会社にはあまり縁が無い製品のような気が・・・(^^;

但し、数百単位でアプリケーションを使っている企業や、ITサービスを提供する側の事業者にとっては、提供サービスを管理する基幹システム的な位置付けとしてはハマるような気がしています。
アプリケーション(システム)を全てサービス視点で捉え、提供機能を活用していくのは、かなりハードルが高そうですが。。。


また、以前のこのBlogのエントリ「アプリケーション・ポートフォリオとは?」で、、、
結論として言葉の意味は・・・「アプリケーション・ポートフォリオ」と「プロジェクト・ポートフォリオ」に明確な違いは無く、ほぼ同じことを指していることも分かりました。
と書きましたが、ChangePointが実現するアプリケーションポートフォリオ機能は、上述のとおりサービス視点の管理という点で所謂プロジェクト・ポートフォリオ機能とは異なっているようですね。

参考までに・・・Gartnerのレポートによれば、アプリケーションポートフォリオマネジメント(APM)の平均成熟度レベルは5段階評価で「1.46」と厳しい結果がでており、ツールの活用が進んでいると言われる欧米においてもアプリケーションレベルでポートフォリオを管理できている企業は、極めて少ないのが実情のようです。

最後に・・・製品ネタを書いていると、「そろそろPPM製品の比較表を・・・」という声が(社内から???)聞こえてきそうですが、中途半端な情報で比較表を作るのは本意ではないので、必要になったタイミングでしっかりと情報収集した上で対応したいと思います( ̄ー ̄)

2011年1月27日木曜日

JUASの「システム・リファレンス・マニュアル(SRM)」

現在担当しているプロジェクトが佳境に差し掛かり、Blogの更新も滞ってましたが、今日の報告会でほんの少しだけ???前進しました(^^)v
次のステップの検討に際して資料を確認している中で、このガイドラインの話をBlogに書いてなかったことを思い出したので、、、忘れないうちにご紹介したいと思います。


忘れていたコトを思い出した・・・という前振りだけでしたが、今回のテーマはJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)のシステム・リファレンス・マニュアル(SRM)です(^^)
IPA(情報処理推進機構)がJUASに委託して作成されたガイドラインなので、電子データはIPAのサイトに公開されていますが、一般的にはJUASのガイドラインと認識されていると思います。


  • システム・リファレンス・マニュアル:SRM(JUAS)
    - 第1巻(2004年)
    - 第2巻(2005年)


このガイドラインは、「ユーザー企業のIT戦略策定のリファレンス」という位置付けでユーザー視点で作成されたものですが、経営戦略とITのあり方から、開発・保守・運用管理のノウハウに至るまで非常に広範で(名実ともに???)厚みのある内容となっています。


2004~2005年に作成されたガイドラインのため、当然のことながらトレンド等は少し古いですが、記載内容の多くは現在でも十分活用できるものと思いますし、実際に様々な資料で引用されているケースも見ますので、今でも実践的に活用されているガイドラインと言えると思います。
#時間さえ許せば???読み物としても読むのも面白いと思います。


残念な点を挙げるとすると、、、良い点の裏返しかもしれませんが、ボリュームが多い(多すぎる!)コト、第1巻と第2巻が前半/後半の関係でなく、第1巻を補足/改訂する形の第2巻だったりするので、両方見ないと探している情報に辿りつかないコト、でしょうか?
ちなみに、このガイドラインの全体像を把握したい方は、サマリ版を使ってざっと目を通すのがオススメです。
読み物として見たい方は・・・JUASから刊行物を購入するという選択肢もあります(^^;


なお、このBlogのテーマであるIT投資マネジメントに関するリファレンスは、第1巻の「第2章 戦略・企画」(P.106~174)にあります。
特に「第4節 投資判断と投資評価手法」、「第5節 投資効果測定」の内容は、他のガイドラインのベースにもなっている内容なので、このガイドラインを見たことが無い方は是非チェックしてみて下さい(^^)


最後に、、、このガイドラインに直接的な関係性はありませんが、私の知人の中でも特筆すべき?武勇伝を数多く持つコンサルタントHくんが最近「IT投資評価で重要となる事後評価」というテーマで会社のコラムを書いていました。
そのコラムの中で触れられているJUASの「第16回企業IT動向調査2010」においても、SRMからの引用があります。ちょうどこのテーマを書きかけていたところだったので、不思議な縁にびっくりデス。


「まさか、あのHくんが???」と思った方、是非リンク先からコラムを参照して、フィードバックをしてあげて下さい( ̄ー ̄)
↑↑↑ 内輪ネタで締めてスミマセン。。。

2011年1月17日月曜日

国内ITサービス市場

年明け早々、バタバタ・・・で、気がつけば早2週間が過ぎてしまいました(^^;
今年1回目のテーマは、IT Proの記事で興味深かった「国内ITサービス市場」の、ご紹介です。


ガートナーの山野井氏の執筆記事ですが、この記事を見ていて、、、私が初めて知ったこと&少し意外と感じたことは、下記の3点です。
  • 世界のITサービス市場において、「国内IT市場は一国の市場規模としては、米国に次いで2位」である。
  • 国内ITサービス市場において、成長率が一番高いのは「アプリケーション運用管理」サービス、市場規模が一番大きいのは「IT基盤運用管理」サービスである。
  • 国内ITサービス市場において、ストック型のサービスの市場規模は、フロー型の市場規模の約1.6倍。

まず、国内ITサービス市場の海外市場における位置付けは、、、知っているヒトにすると当り前の話かもしれませんが、グローバル市場の約14%を占めるという規模の大きさ(成長率の低さも?)は特筆すべきモノがありますね(^^;


次に国内ITサービス市場の分類と成長率について、分類の定義が記事からは正確には把握できなかったものの、「アプリケーション運用管理」サービスが平均3%以上成長率であったり、「IT基盤運用管理」が「アプリケーション開発」の1.3倍以上の市場規模であったりと、中々興味深いデータだと感じています。


このデータを見て、皆さんはどう感じたでしょうか?
クラウド化が叫ばれている昨今の現状を踏まえ、2年後、3年後にどう変わっていくと予測されるでしょうか?

最後に、この記事の一部を引用させて戴くと、、、
  • 特にIT投資のポートフォリオを「企業の競争力強化につながる差別化領域」と、「競合他社並みでもよい標準仕様の領域」に大別し、後者への投資を絞る傾向が強まっている
という話は納得感がありますし、上記の前提となる「IT投資ポートフォリオの考え方」は、多くの企業にとって重要度が高まると考えられますね。

という訳で???、今年もこのBlogを通して、情報発信を続けていきたいと思います(^^)